菊地慶一 もうひとつの知床―戦後開拓ものがたり (道新選書)

もうひとつの知床―戦後開拓ものがたり (道新選書)
知床自然センターからフレペの滝(乙女の涙)を目指して歩く。暗い森の中の下り坂を抜けると突然視界が開けた笹原に出る。フレペの滝まで続いているこの土地や、知床五湖へ向かう道の両側の開けた土地が、かつて開拓によって開かれた土地であることは知っていたし、知床100平方メートル運動の対象となった場所であることも知っていた。しかし、今この土地を目にしても開拓当時の人々の暮らしがどのようなものであったかはとても想像できない。この本は戦後岩尾別に入植した人々の生活と離農せざるを得なかった姿を描いている。世界遺産に登録されたため知床五湖を訪れる観光客は増加しているようだけれど、今も残る廃屋を気にかける人がどれくらいいるのだろうか。